2023.04.02
フランツ=ヨーゼフ・ファイニク 作 フェレーナ・バルハウス 絵 ささきたづこ 訳
あかね書房2004年
アンナはいそいで起きるのは苦手です。足が両方とも動かないのでなんでも時間がかかります。自分の足なのに思うようにならないので、足がうんと遠くにあるような気がします。
でも、ゆっくりでも着替えは自分でできます。
今日、学校はお休み。アンナはお母さんに頼まれてスーパーに一人でお買い物に行くことになりました。ひとりでお使いに行くのは初めてです。
町に出ると、にっこり笑ってくれる人もいましたが、多くの人はじろじろとアンナを見ました。
女の子がアンナのそばにやって来て、車いすを指さして「それ、なあに?」と聞きました。「これは、車いすって、いうのよ。」女の子はもっと聞きたそうでしたが、その子のお母さんが「そんなこと、聞くもんじゃありません。だまってなさい。」と叱るように言いました。
車いすについてお話しするのがどうしていけないのかしら?
スーパーでミルクやリンゴの袋を取ろうとすると、店員がすぐに取ってくれます。なにもできない小さな子みたいに扱われて、アンナはがっかりしてしまいます。
アンナの気持ちはだ誰にもわかってもらえそうにありません。そのとき「泣かないで」と声をかけてくれたのは太った男の子。
「ぼくたち、ちょっとだけ普通とは違うんだよ。だけど、違ってもいてもいいのさ。違っているのって、本当は特別なことなんだから。」
初めてのお使いでアンナはさまざまな経験をしました。
そして、いくら見られても、アンナはもう気にしなくなりました。
お使いもちゃんとできたし、ほかの人に助けを頼むこともできました。そのうえ、おまわりさんにお願いすることもできたのですから。