絵本日記「1年365冊」

『でんでんむしのかなしみ』 | 言の葉のうつわ

『でんでんむしのかなしみ』

2023.06.16

新美南吉 作  かみやしん 絵  大日本図書 1999年

でんでんむしのかなしみは新美南吉が1935年に発表した作品です。

1998年に当時皇后でいらっしゃった美智子さまがインドのニューデリーで開催された国際児童図書評議会で「橋をかける―子供時代の思い出」と題して基調講演された中でこのお話を心に残る作品として紹介されたことがきっかけで、大きく注目を集めることになりました。 

あるとき、一匹のでんでんむしは気がつきました。

「私の背中の殻のなかには悲しみがいっぱいつまっているではないか。」

この悲しみはどうしたらいいのでしょう。

そこで、でんでんむしはお友だちを順々に訪ねました。

どのでんでんむしも同じことを言いました、

「あなたばかりではありません。私の殻のなかにも悲しみはいっぱいです。」

とうとうはじめのでんでんむしは気がつきました。

「悲しみは誰でも持っているのだ。私ばかりではないのだ。私は私の悲しみを堪えていかなきゃならない。」

南吉はでんでんむしを見て、殻の中には悲しみがつまっていると考えたのですね。

雨の季節に出会うでんでんむしが一層愛おしくなってきました。

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