2023.08.12
小松申尚 文 かのうかりん 絵 文芸社 2020年
町の商店街をなわばりにしている猫。名前を「どろぼうねこ」と言います。
魚屋のおじさんとは顔なじみ。今日も「さんまをぬすんでいっていいかい」と声をかけています。
おじさんは1匹だけならいいよと答えました。
ある日、電気屋さんの店先からテレビの天気予報が聞こえてきました。
「はれのち、さんま。ところにより、さば。」
どろぼうねこが西の空を見上げると、うろこの形をした雲がもくもくと流れてくるのが見えました。
魚屋のおじさんが思案顔でどろぼうねこに声をかけてきました。
「さんまがただで空から降っちゃ、商売あがったりだ。何とかできないものかねえ。」
ふだんお世話になっているからひとはだ脱ぐことにしよう。
そこでどろぼうねこは何十匹ものねこを集め、それぞれの場所で待機させます。
さあ、さんまが降り始めました。お腹を空かせていたねこたちは次から次と平らげていきます。
やがて、空は晴れ渡り、ねこたちは満腹。
それからというもの、さんまが降ることはありませんでした。
商店街は平和をとりもどしました。