2023.09.16
いもとようこ 作・絵 岩崎書店 2004年
月夜にかもしかの子どもが生まれた。
ふんばってふんばってぼくは立ち上がった。
母さんのまねをしながらいろいろなことを覚えていく。
雪に閉ざされた冬には木の皮を食べることも教わった。
お月さまのきれいな夜、お散歩をしているときに母さんは言った。
「おまえが ひとりで いきていくように なったら、つらいことが たくさん あるだろう。くじけて たおれることも あるだろう。そんなときは おもいだすんだよ。うまれたときのことを。
ころんでも ころんでも おまえは ひとりで たちあがった。おまえは つよいんだよ。」
ある日、ぼくが山を駆け回って遊んで帰って来たとき、だたいま~と駆け寄ったぼくを母さんは突き飛ばした。
母さんは今までみたことのない怖い顔でぼくをにらんでどこかへ行ってしまった。
ぼくは泣いた・・・声が出なくなるまで泣いた。
そして、ついに立ち上がり、歩き始めた。