2023.12.22
いまむらあしこ 文 あべ弘士 絵 童心社 2012年
凍りつく寒さの静まりかえった夜の森で、のうさぎの子はひとりぼっちで巣穴にうずくまっています。
母さんとはずっとはぐれたまま。おそろしいきつねに追われて逃げた夏のあの日から、母さんは戻ってこないのです。
そのときから、のうさぎの子はひとりで食べ物を探し、安全な場所をみつけて眠り、ひとりで毛づくろいをすることも覚えました。
雲が切れてお月さまが顔を出し、森の中は急に明るくなりました。キバをむいたきつねが巣穴めがけておどりかかりました。それより早くのうさぎの子は鉄砲玉のように飛び出しました。
背中に迫るきつねの赤い口。そらからはふくろうのするどいかぎづめが。
振り返る暇はありません。目の前に立ちはだかる雪の山に最後の力をふりしぼって一気に駆け上がりました。のうさぎの子は逃げ切ったのです。
朝を迎え、のうさぎの子は生きる喜びを体じゅうに感じています。