2024.01.26
佐野洋子 作・絵 講談社 2016年
「ねー おかあさん、ねこ ほしいよう」わたしはお母さんに100万回も言った。
「だめ、だめ、だめ」とお母さんは100万回も言った。おかあさんはおつかいに出かけた。
わたしは寝っ転がって「ねこ いると いいなあ」と小さな声で言った。
「ニャー」小さな猫の声がした。
さっきより少し大きな声で言ってみると、また「ニャー」。
庭じゅうを探検しながら、
「ねこ いると いいなあ」
「ニャー」
「ねこ いると いいなあ」
「ニャー」
わたしはお部屋で絵を描き始めた。
まっしろなねこ。
しましまのねこ。
まくろなねこ。
ぶちのねこ、みけのねこ。
ねこたちは勝手に喧嘩をし始めた。わたしにかみつくねこもいる。わたしはわーわー泣いた。
「ねこ どっか いけ、どっか いけ」
「おかあさーん」はだしで外へ飛び出して、泣きながら走った。
おかあさんは、ぎゅうっと、わたしを抱きしめてくれた。
ねこはいっぴきだけなら、いいかなあ。