2024.02.07
内田麟太郎 作 竹上妙 絵 佼成出版社 2024年2月7日
ライアル・ワトソン著『エレファントム 象はなぜ遠い記憶を語るのか』を読み、深い感動を受けた内田さんが、「その感動を宝に」書かれたお話です。
岬に老いたメスのゾウが立っていました。最後のゾウでした。ゾウは沖に向かってともだちを呼びました。白く潮を吹きながら現れたともだちは、だまってともだちの話を聞き続けました。
広く豊かな森でゾウたちは長い間、安心して暮らしていました。
そこに銃をかまえた人間がきました。仲間が次々に倒れていきました。人間は牙を切り取って船に積み込みました。
ゾウは数えられるくらいになりました。二十五とう。そして、七とうに。ゾウたちはどんなに願っても命を明日につなげることはできませんでした。
人間が来なくなった森にはメスのゾウとこどものゾウの二とうだけが残りました。
何日も雨が降り続き、二とうのゾウは体を寄せてあたためあいました。こどものぞうが冷たくなり、メスのぞうはさいごのゾウになりました。
さいごのゾウは岬からともだちに向かって話し終えると、「おげんきで」と。そして、ともだちはゾウの最後をみとりました。
クジラは海の底で泣き続けました。