2024.05.17
内田麟太郎 作 味戸ケイコ 絵 瑞雲舎 2009年
だっこをしらない女の子でした。女の子の心の中にはいつも冷たい雨が降り続けていました。
女の子はお母さんになりました。赤ちゃんも女の子。でも、お母さんは赤ちゃんを抱くことができませんでした。ただ、黙って子どものそばにいました。
少し大きくなった女の子は「ママ、まねっこでいいから、だっこして」と言いました。「・・・まねっこでいいならね」とお母さんは娘をだっこしました。とっくん、とっくんという心臓の音も互いに聞き合いながら、
次の日も娘はまねっこのだっこをおねだりしました。
お庭ではいぬやねこやうさぎたちがだっこして遊んでいます。
二人はそれを見て、笑いました。お母さんは娘をだっこします。
お母さんの心に降っていた雨が、ゆっくりとあがっていきました。