2024.06.12
向田邦子 原作 角田光代 文 西加奈子 絵 小学館 2019年
原作は、向田邦子さんが1976年に発表した随筆です。向田さんのエッセイ集『眠る盃』に収められています。多くの人に愛されるこの名作が、素敵なお二人によって小さな子どもたちにもよくわかる絵本になりました。
戦争中の向田さん一家の実話です。
戦争が激しくなり、いちばん下の妹さんを疎開させることになりました。妹はまだ字が書けません。そこでお父さんは表面に自分の住所と名前を書いた葉書を何枚も持たせ、元気な日は丸を描いてポストに入れるようにと聞かせます。
一週間経ち、大きな赤い丸が描かれた葉書が届きます。家族はみんな安心しました。ところが、次の葉書から丸は黒で描かれるようになり、だんだん小さくなっていきます。そして、とうとうバツになってしまいました。その後は葉書も届かなくなりました。
三月後、お母さんが迎えに行くと妹は風邪をこじらせて狭い布団部屋に寝かされていました。
家族が待つ家に妹が帰って来た時、裸足で飛び出したお父さんは小さくなった妹を抱いておおんおおんと声をあげて泣きました。