2024.06.13
山下昭生 作 杉浦範茂 絵 偕成社 1983年
ぼくはけんかに負けた。くやしくて運動場にひっくり返っていたら、先生が呼びに来た。ぼくは絶対に起きてやらなかった。みんなも先生も教室に戻って行った。
ぼくの目から涙がじわじわわいてくる。
まつげの向こうに海のように見える青い空。まつげの海を虫のようなさかなが泳いでいる。メダカのこどものような魚が現れて、ぱくりと食べた。それをイワシのこどものような魚が食べる。出てくるたびに魚は大きくなる。
「さあ、のるか、のらないのか」
にじ色の魚が浮かんでいた。そして、お腹の下にはかごが下がっている。ぼくは体を起こしてかごにとびついた。飛行船は浮き上がった。
「ちょっと 重いなあ。心のにもつを おりしてくれよ」飛行船がぼくに言った。
ぼくはあいつをぶっとばすことを考えた。もう、ぼくの相手じゃない。
気がつくと、ぼくのまわりに先生やともだちが立っていた。「なかなおりしなさい。」
「おぼえてろ。こんどは はんたいに すなを くわせてやるからな。」ぼくはあいつをにらみつけて言った。「きょうのすな うまかったろう。」あいつがべーと舌を出した。
「こら!」先生のあきれた声に、みんなが笑った。