絵本日記「1年365冊」

『まつげの海のひこうせん』 | 言の葉のうつわ

『まつげの海のひこうせん』

2024.06.13

山下昭生 作  杉浦範茂 絵  偕成社 1983年

ぼくはけんかに負けた。くやしくて運動場にひっくり返っていたら、先生が呼びに来た。ぼくは絶対に起きてやらなかった。みんなも先生も教室に戻って行った。

ぼくの目から涙がじわじわわいてくる。

まつげの向こうに海のように見える青い空。まつげの海を虫のようなさかなが泳いでいる。メダカのこどものような魚が現れて、ぱくりと食べた。それをイワシのこどものような魚が食べる。出てくるたびに魚は大きくなる。

「さあ、のるか、のらないのか」

にじ色の魚が浮かんでいた。そして、お腹の下にはかごが下がっている。ぼくは体を起こしてかごにとびついた。飛行船は浮き上がった。

「ちょっと 重いなあ。心のにもつを おりしてくれよ」飛行船がぼくに言った。

ぼくはあいつをぶっとばすことを考えた。もう、ぼくの相手じゃない。

気がつくと、ぼくのまわりに先生やともだちが立っていた。「なかなおりしなさい。」

「おぼえてろ。こんどは はんたいに すなを くわせてやるからな。」ぼくはあいつをにらみつけて言った。「きょうのすな うまかったろう。」あいつがべーと舌を出した。

「こら!」先生のあきれた声に、みんなが笑った。

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