2024.07.06
スズキトモコ ひかりの国 2024年
小さな村のかたすみにあるおじいさんの家。たくさんの花が咲いている小さな庭がありました。その庭に、一羽のにわとりが暮らしていました。
「ふん!なんて みっともない はなばかりなんだ!まったく ひどいもんだ。それに くらべて この まっかな とさかと いったら、ああ なんて きれいなんだろう」
いつもこんな調子です。
ある日、とてもきれいなバラが咲きました。バラは歌が大好きで、毎日楽しそうに歌っていました。にわとりはそんなバラのことがおもしろくありません。にわとりとバラはいつも大げんか。
あるとき、おじいさんがやって来て、テーブルに飾ろうとバラを切ってしまいました。バラはおじいさんの家に連れていかれました。
バラがいなくなった庭はとても静かです。「これからは おれさまが うたってやる」にわとりは歌おうとしますが、声が出ません。
やっと声が出たとき、にわとりはオンオン オンオンと声をあげて泣きました。それにつられて空から雨がポロポロ ポロポロ降ってきました。庭の花たちは雨にぬれてキラキラと輝いていました。
にわとりはそのとき初めて気がつきました。庭の全ての花がとてもきれいだということを。
「コケコッコ―」にわとりは大きな声で鳴きました。
バラも初めて気がつきました。にわとりの声が本当はきれいだということを。
「ラララララー」「コケコッコー」
ふたりの歌が庭いっぱいに響きました。