絵本日記「1年365冊」

『ないたにわとり』 | 言の葉のうつわ

『ないたにわとり』

2024.07.06

スズキトモコ  ひかりの国 2024年

小さな村のかたすみにあるおじいさんの家。たくさんの花が咲いている小さな庭がありました。その庭に、一羽のにわとりが暮らしていました。

「ふん!なんて みっともない はなばかりなんだ!まったく ひどいもんだ。それに くらべて この まっかな とさかと いったら、ああ なんて きれいなんだろう」

いつもこんな調子です。

ある日、とてもきれいなバラが咲きました。バラは歌が大好きで、毎日楽しそうに歌っていました。にわとりはそんなバラのことがおもしろくありません。にわとりとバラはいつも大げんか。

あるとき、おじいさんがやって来て、テーブルに飾ろうとバラを切ってしまいました。バラはおじいさんの家に連れていかれました。

バラがいなくなった庭はとても静かです。「これからは おれさまが うたってやる」にわとりは歌おうとしますが、声が出ません。

やっと声が出たとき、にわとりはオンオン オンオンと声をあげて泣きました。それにつられて空から雨がポロポロ ポロポロ降ってきました。庭の花たちは雨にぬれてキラキラと輝いていました。

にわとりはそのとき初めて気がつきました。庭の全ての花がとてもきれいだということを。

「コケコッコ―」にわとりは大きな声で鳴きました。

バラも初めて気がつきました。にわとりの声が本当はきれいだということを。

「ラララララー」「コケコッコー」

ふたりの歌が庭いっぱいに響きました。

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