2024.08.04
こわせたまみ 文 いもとようこ 絵 偕成社 1993年
ねこのおうさまは、ごきげんなときにはのどを鳴らします。
ある日、にゃんごろおうさまの国に初めて電話が引かれました。おうさまはいろいろなところに電話をして、うれしくてたまりません。
「にゃんごろ ごろ ごろ」
すっかり電話が気に入ったおうさまに、家来が言いました。「くにじゅうの ものたちも おおよろこびで つかっております。」
それを聞いたおうさまは怒り出しました。みんながつかっているのはけしからんと言うのです。
くにじゅうの電話がひとつ残らずお城に運びこまれました。
たくさんの電話を前にして、おうさまは電話がかかってくるのを待っています。でも、電話がかかってくるはずはありません。
そのうち、おうさまは怒って怒ってあんまり怒ったので、頭がひどく痛くなってきました。医者からも薬屋からも電話をとりあげたので、かけることができません。
病院に運ばれたおうさまは、みんなに電話を返すように家来に命じました。
「もしもし おうさま、おかげんは いかがですか?」あちこちから電話がかかってきます。
みんなの声を聞いて、おうさまはすっかり元気になりました。