絵本日記「1年365冊」

『なまずにいさん』 | 言の葉のうつわ

『なまずにいさん』

2024.10.05

穂高順也 作  西野沙織 絵  講談社 2021年

ある沼に、小さななまずがすんでいました。

なまずはいつもひとりぼっち。魚たちは、姿が違うからと仲間に入れてくれません。

ある日、なまずはたくさんのきれいな玉をみつけました。その玉から小さな生き物が次々と生まれました。生まれたての赤ちゃんたちはなまずのまねをして、あとをついて泳ぎます。なまずは嬉しくてたまりません。弟たちに囲まれて幸せでした。

弟たちは少しずつ大きくなりましたが、いっこうにひげがはえてきません。そのかわり、足や手がはえ、やがてかえるの姿になりました。

おおきくなったかえるたちは広い世界に出ていきます。「にいさん、いままで どうも ありがとう」

なまずは、またひとりぼっちになりました。

みんな元気にしているかなあ・・・なまずが池から顔を出したそのとき、大きな翼のわしがなまずの体をつかんで空に舞い上がりました。暴れて地面におっこちたなまずを、こんどはへびがつかまえました。

にらみあう、わしとへび。

すると、なにやらヴォーン、ヴォーンという音が聞こえてきます。あばれ牛の大群です。

わしもへびも逃げ出しました。

おそろしい声が迫ってきます。なまずは覚悟を決めました。

ところが、その声は「弟たち」だったのです。たくさんのうしがえるたちが「兄さん」を助けにやって来たのでした。

かえるたちはみんなで、なまずを沼まで運んでくれました。

まなまずは今日も沼でひとりぼっちですが、すこしもさびしくはありません。離れたところに、たくさんのきょうだいがいるからです。

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