2024.10.05
穂高順也 作 西野沙織 絵 講談社 2021年
ある沼に、小さななまずがすんでいました。
なまずはいつもひとりぼっち。魚たちは、姿が違うからと仲間に入れてくれません。
ある日、なまずはたくさんのきれいな玉をみつけました。その玉から小さな生き物が次々と生まれました。生まれたての赤ちゃんたちはなまずのまねをして、あとをついて泳ぎます。なまずは嬉しくてたまりません。弟たちに囲まれて幸せでした。
弟たちは少しずつ大きくなりましたが、いっこうにひげがはえてきません。そのかわり、足や手がはえ、やがてかえるの姿になりました。
おおきくなったかえるたちは広い世界に出ていきます。「にいさん、いままで どうも ありがとう」
なまずは、またひとりぼっちになりました。
みんな元気にしているかなあ・・・なまずが池から顔を出したそのとき、大きな翼のわしがなまずの体をつかんで空に舞い上がりました。暴れて地面におっこちたなまずを、こんどはへびがつかまえました。
にらみあう、わしとへび。
すると、なにやらヴォーン、ヴォーンという音が聞こえてきます。あばれ牛の大群です。
わしもへびも逃げ出しました。
おそろしい声が迫ってきます。なまずは覚悟を決めました。
ところが、その声は「弟たち」だったのです。たくさんのうしがえるたちが「兄さん」を助けにやって来たのでした。
かえるたちはみんなで、なまずを沼まで運んでくれました。
まなまずは今日も沼でひとりぼっちですが、すこしもさびしくはありません。離れたところに、たくさんのきょうだいがいるからです。