2024.10.11
サトーハチロー
ちいさい ちいさい人でした
ほんとうに ちいさい母でした
それより ちいさいボクでした
おっぱいのんでる ボクでした
かいぐり かいぐり とっとのめ
おつむてんてん いないいないバア
きれいな声の人でした
よく歌をうたう 母でした
まねしてうたう ボクでした
片言まじりのボクでした
ああ アニィローリー マイボニィ
それから ねんねんようおころりよう
羊によくにた人でした
やさしい目をした 母でした
ころころこぶたのボクでした
おはなをならす ボクでした
すぐにおぼえた 午後三時
おちょうだいする くいしんぼう
毎晩祈る人でした
静かに つぶやく母でした
寝たふりしているボクでした
なんだか悲しい ボクでした
春はうるんだ お月さま
秋は まばたきしている星
影絵を切りぬく人でした
うつしてみせる母でした
お手手たたくボクでした
何度も せがむボクでした
外はこまかい 粉の雪
影絵のきそうな白い路
夜なべをしている人でした
よくつぎをあててる母でした
ときどきのぞく ボクでした
よくにらまれる ボクでした
こおろぎ みみずく 甘酒屋
遠い チャルメラ おいなりさーん
話のじょうずな人でした
たくさん知ってる人でした
ソエカヤ?というボクでした
なかなか寝られない ボクでした
エクトロ・マロー アンデルセン
かちかち山に かぐや姫
ああ
思い出の中
その中で
こっちをむいている ちいさい人
ちいさい母
ああ 思い出の中
その中で
なお 甘えている ちいさいボク
ちいさいボク
ちいさい
ちいさい
むかしの
むかしの
むかしのボク
ちいさい………むかしのボク