2024.10.16
名木田恵子 作 こみねゆら 絵 佼成出版社 2013年
6歳のえなは、ばあちゃんと暮らしています。海がえなの家をのみこみ、えなだけが助かったのです。
毎晩えなには海がうなるおそろしい響きが聞こえ、泣きだします。すると、ばあちゃんはえなを強く抱きしめて、声が出ないように泣きます。えなのおかあちゃんはばあちゃんの子どもでした。
その日もえなが裏山にのぼると、大きな木の下で知らないお兄ちゃんが空を見上げています。
お兄ちゃんはえなに月の貝を握らせてくれました。今日は新月だから何も見えない。明日の夜になったら光り始める。まんまるになる頃、ここで会おうね。
月の貝はえなの手のひらで形を変えていきます。明日は満月という晩に、えなは夢を見ました。
うす青いもやの向こうにたくさんの人が集まっています。
―かえれなくても みんなが かなしまないように
 ̄そうだよ、みんなのことのほうが 心配なんだから
―わたしたちは だいじょうぶだって 知らせたい
そして、祈るような手つきで胸の奥からみんなが取り出したものは月の貝でした。
浜にあがってきた人たちは月の貝を砂にうめていきます。
おかあちゃんもいました。犬のゴンもいました。
―かわいがってくれて しあわせだったよ!
―えな・・・・・・。ずっと ずっと 見守っているからね。
おかあちゃんの声がはっきり聞こえました。