絵本日記「1年365冊」

『さけが よんひき』 | 言の葉のうつわ

『さけが よんひき』

2024.12.08

最上一平 作  喜湯本のづみ 絵  鈴木出版 2015年

ひとりぐらしのおばあさんは川の近くの畑で野菜を作っています。

ところが、夏になって、きゅうりやトマトやすいかが食べごろになると、なくなってしまうのです。次の日に畑に行くと、やはりなくなっています。その次の日も、また同じ。

おばあさんはひとりぐらしだから、きゅうり1本、トマトも1本、すいかもほんの少しあれば間に合うので、だれかが手伝って食べてくれればありがたいくらいなものでした。

ある日の夕方、畑にいたのはカッパでした。おばあさんはカッパが野菜を持ち帰る様子を見て、くすっと笑いました。

それから、毎日、夕方になると畑に出かけ、こっそりカッパの様子を見るのが楽しみになりました。だれかの役に立っているのが嬉しかったのです。

夏が過ぎ、だんだん野菜はならなくなりました。おばあさんはぺたっと座って、カッパに謝りました。

秋が深まって、もう畑には何もありません。

ある日、おばあさんの家をだれかがトントンと叩きました。おばあさんが戸を開けると、そこにはさけがよんひき置いてあります。

「ありゃ、あのカッパだ」

ぽたぽたとしずくのあとが川のほうに続いていました。

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