2024.12.08
最上一平 作 喜湯本のづみ 絵 鈴木出版 2015年
ひとりぐらしのおばあさんは川の近くの畑で野菜を作っています。
ところが、夏になって、きゅうりやトマトやすいかが食べごろになると、なくなってしまうのです。次の日に畑に行くと、やはりなくなっています。その次の日も、また同じ。
おばあさんはひとりぐらしだから、きゅうり1本、トマトも1本、すいかもほんの少しあれば間に合うので、だれかが手伝って食べてくれればありがたいくらいなものでした。
ある日の夕方、畑にいたのはカッパでした。おばあさんはカッパが野菜を持ち帰る様子を見て、くすっと笑いました。
それから、毎日、夕方になると畑に出かけ、こっそりカッパの様子を見るのが楽しみになりました。だれかの役に立っているのが嬉しかったのです。
夏が過ぎ、だんだん野菜はならなくなりました。おばあさんはぺたっと座って、カッパに謝りました。
秋が深まって、もう畑には何もありません。
ある日、おばあさんの家をだれかがトントンと叩きました。おばあさんが戸を開けると、そこにはさけがよんひき置いてあります。
「ありゃ、あのカッパだ」
ぽたぽたとしずくのあとが川のほうに続いていました。