2025.03.12
レオ・レオーニ 谷川俊太郎 訳 あすなろ書房 2002年
ねずみたちが暮らしているのは、「かべ」のある世界。あたりまえだったので、ねずみたちはかべの向こうなんてものがあるのかどうかさえ、気にしなかった。みんな、あれこれおしゃべりしたけれど、いちばん若いティリ―だけがかべをみつめ、むこうがわのことを考えた。
みんなを誘って登ろうとしたが、かべはどこまでも高かった。くぎで穴をあけるのも無理。端があるはずだと何時間も歩いてみたけれど、壁には終わりがなかった。
ある日、みみずが穴を掘っているのを見て、ティリ―は夢中になって穴を掘り始めた。土の中を進んでいき、突然まぶしい光に目がくらんだ。むこうがわに出たのだ。そして、むこうがわで出会ったのは、ふつうのねずみたち。みんなティリーを大歓迎してくれた。
その日から、ねずみたちはかべを自由にゆききするようになった。