2025.03.20
浜野卓也 作 梅田俊作 絵 佼成出版社 1989年
創作民話の絵本です。
若いきこりの太平は山の中で木を切り倒します。おっかあは「おお みごと。しんだ おとうに みせて あげたかった」と背中の汗をふいてやるのでした。山を下りるときには、太平はおっかあをおんぶして歌をうたいます。
ところが、都でいくさが始まり、太平は兵士として連れていかれることになりました。おっかあは泣きながら村はずれの谷川まで太平を送っていきました。
「しんぱい いなくていいのじゃ。きっと かえってくるから」
三年たっていくさは終わりました。おっかあは毎日谷川まで太平を迎えに行きました。一年、二年、三年・・・太平は帰ってきません。さらに二十年。おっかあはおばばになっていました。
ある晩のこと、おばばは、太平が谷川を渡ろうとして「おっかあー」と呼んで渦にのここまれた夢を見ました。次の日、旅の若者がおぼれ死んでいました。
そのときから、おばばは太平の迎えをやめて、働きだしました。わき目もふらず働き続け、「ぜにを もっと くだされ」とせがむのです。村人はあきれ、子どもたちは「よくばり おばば!」とののしりました。
あるひ、村のおしょうがわけをたずねると、おばばは初めて打ち明けました。谷川に橋をかけたい。それにはたくさんのお金がいる。
おしょうは村をまわり、みんなで橋をつくろうと話をして回りました。
橋が完成しました。村人はお祝いといっしょに太平の供養もすることにしました。おばばは働きすぎて、目が見えなくなっていました。
橋の渡り初めの日、おしょうのお経が終わりに近づくと、山のかげに白い雲が湧き、太平の顔そっくりになりました。次の瞬間、滝のようなどしゃぶりになり、お経が終わると、雨が止んであざやかな虹がかかりました。
その虹をおばばがだれかにおぶさって渡って行きます。
「おばばは 太平に むかえられて ごくらくへ いっしょに いったに ちがいない」村人は手を合わせました。