絵本日記「1年365冊」

『チリンのすず』 | 言の葉のうつわ

『チリンのすず』

2025.05.30

やなせたかし  フレーベル館 1978年

チリンはこひつじ。首には金色のすずがつけられていました。チリンはおかあさんにいつもおおかみには気をつけるようにと言われていました。

ある夜、おおかみのウォーがまきばを襲い、おかあさんはチリンをおなかの下にかばって死にました。

チリンは泣きながらおおかみの山に登っていきました。そして、昼寝をしていたウォーにああなたのようなつよいおおかみになりたいから、弟子にしてくださいと頼みます。

チリンは毎日ウォーのもとで激しい訓練を受けました。何年もすぎ、チリンはどこから見てもひつじには見えないけだものになりました。

チリンとウォーは二人組のあばれものとして、おそれられるようになっていました。

嵐の夜、二人はひつじのまきばを襲うことにし、丘をかけおりました。チリンは闇にまぎれてウォーを襲い、チリンのするどいつのはウォーののどに突き刺さりました。

「おまえはおかあさんのかたきだ、このときがくるのを、いまかいまかとまっていた。」

「ずっとまえから、いつかこういうときがくるとかくごしていた。おまえにやられてよかった。おれはよろこんでいる。」

夜が明けたとき、チリンはいわやまの断崖でうなだれていました。

「ぼくはおかあさんのかたきをとった。しかし、ぼくのむねはちっともはれない。ゆるしてくれ、ウォー。ぼくはいつのまにかおまえをすきになっていたのだ。」

チリンは泣きながら、どこともなく山を越えていきました。

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