2025.07.13
たかしよいち 文 福田庄助 絵 岩崎書店 1981年
むかし、都に犬好きの殿さまがいた。殿さまは、犬を「お犬さま」と呼ばせて、人よりも大切にしておった。
犬が勝手に人にかみついても罰は受けないのに、人が犬をつかまえたりなぐったりしたら、すぐに牢屋にほうりこまれた。
犬たちはおおいばりで暮らしていた。そのうえ、犬たちはどろぼうを十人つかまえると高い位をもらって、金の犬小屋に住むことができた。
「くろ」はどろぼうを九人つかまえ、あと一人のどろぼうを待ちかまえていた。
神社の床下に隠れ、お賽銭を盗みにやってくるどろぼうをつかまえようとしていたとき、忍び足でやってくるどろぼうの姿があり、くろは、ワン!とおもいっきり吠えた。びっくりしたどろぼうはひくっ!と大きなしゃっくりをした。
そのしゃっくりがくろの口の中に飛び込んだ。そのすきにどろぼうは逃げ出し、くろのしゃっくりは止まらない。
誰に聞いてもしゃっくりは止まらないまま。
そうするうちに、いつかのどろぼうにばったり出会った。ワン!しゃっくりはくろの口を飛び出して、どろぼうの口へ飛び込んだ。しゃっくりにかえってこられたどろぼうがひくっ!ひくっ!としゃっくりを続けながら逃げているとおともを連れてやってくるお殿さまに出会った。
するとしゃくりはあくびをした殿さまの口へ飛び込んだ。そこくろがやってきて、殿さまにとびついた。怒った殿さまは思いっきりくろの頭を殴りつけた。
「お犬さまを なぐりつけたものは、ろうや いきだぞーっ!」
殿さまはがんじがらめに縛られてしまったんだって。