絵本日記「1年365冊」

『やさしいライオン』 | 言の葉のうつわ

『やさしいライオン』

2025.07.18

やなせたかし  フレーベル館 1982年

やなせたかしの絵本作家デビュー作となった作品。 「『やさしいライオン』がなければアンパンマンも絵本化されなかったと思う」とやなせさんは語っています。 

悲しみだけではない、愛の尊さが全編に流れ、一生そばにいてほしいと思う絵本です。こんなお話です。

昔々ある国の動物園で母親を亡くした赤ん坊のライオンがいた。空腹で痩せこけてブルブル震えていたから「ブルブル」と呼ばれていた。ブルブルは母親のいない寂しさでミルクも飲めずんいいたから、代わりの母親を探すことになった。母親になったのは生まれたばかりの赤ん坊を亡くしたメス犬だった。ムクムク太っていたから「ムクムク」という名前だった。こうして、ムクムクはブルブルの母親となった。ムクムクはブルブルに子守歌を歌って聞かせた。

ブルブルはムクムクから「お手」など様々な芸を教わり、すっかり犬そっくりになっていた。それから何年か経ち、ブルブルは立派な大人のライオンになっていた。ある雨が通り過ぎた日にブルブルは水たまりに映った自分の姿を見て初めて自分が犬ではなくライオンだと知った。しかし、ムクムクは「確かに私とあなたは見た目は違うけど心は同じよ」と慰めた。ブルブルとムクムクは毎日楽しく暮らしていたが、それも長くは続かなかった。ある日、ブルブルはよその動物園へ転園されることになり、ムクムクと離れ離れになってしまった。

それからまた何年かたった。ブルブルはサーカスの人気者になっていた。その日の夜、ブルブルは檻の中で懐かしいお母さんの子守歌を思い出していた。「お母さんだ!」ブルブルは叫ぶとサーカスの檻を破ってムクムクを探しに向かった。街は大騒ぎになり、兵隊たちがライオンを殺そうと銃を持って追いかけた。一方、その頃ブルブルは林の中ですっかり年を取って死にかけているムクムクを見つけた。ブルブルは懐かしいお母さんに会えて甘えていた。ところが、兵隊たちはブルブルに銃を向け、「撃て!」という隊長の掛け声とともに銃は一斉に火を噴いた。騒ぎが収まったころにはブルブルはムクムクを抱きかかえて倒れていた。

その夜、年寄りの犬を背中に乗せたライオンが飛んでいくのを見た人が何人もいたらしい。それは遠い楽園に向かっているブルブルとムクムクなのかもしれない。

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