2025.07.26
シェリル・マクファーレン 文 ロン・ライトバーン 絵 こだまともこ 訳 文化出版局 1994年
黒と白のくっきりとした体を持つシャチ。知能も社会性も高く、群れを作って生活しています。
私は、名古屋港水族館に行くと、シャチの水槽の前から動けなくなるほどです。
この絵本の『シャチのくる日』というタイトルにも惹かれました。
海辺の崖の上にある小屋におじいさんが一人で暮らしていました。夕ぐれになると海の果てをじっと眺めてシャチを待っています。
夏には、シャチの群れは海岸の近くまでやってきて、岩に背中をこすりつけたり、サケを食べたりするのです。毎年、シャチが去っていく日がくると、おじいさんの目には涙が浮かびます。
おじいさんの子どもたちは大きくなって家を出て行ってしまっていたので、おいいさんは一人で大きな畑で作物を育てていました。
ある日、娘が女の赤ちゃんを連れて突然帰ってきました。その子を抱いておじいさんは昔を思い出しました。そして、はじめてシャチが来る日、おじいさんは孫娘を高くかかえあげ、シャチを見せました。
女の子はだんだん大きくなり、いつもおじいさんのそばにくっついて回りました。二人はいっしょに畑を耕しました。
ある年から、おじいさんは畑仕事をやめました。そかわり孫娘とおかあさんが二人で作物を育てるようになりました。おじいさんは小屋のポーチのいすにこしかけ、海の果てを眺め、シャチが来るのを待っていました。
その夏、シャチが帰ってきた日に、おじいさんは旅立ちました。
おかあさんは娘の涙をふいてやってから、言いました。「そんなに かなしまなくてもいいのよ。おじいさんの たましいは あの海の 上に いって シャチといっしょに はねたり 泳いだりしてるんだから」