2025.08.01
灰谷健次郎 文 高畠純 絵 クレヨンハウス 1994年
クジラのおなかの下で小さな声がします。
子どものコバンザメです。コバンザメはクジラのおなかにぴったりすいつきました。
「ぼく、クジラちゃんのおなかにくっついて、とおい海へいくのがゆめだったんだ」
どこからかクジラのなかまがうたってる声が聞こえてきました。
クジラとコバンザメは互いのとうさんかあさんのことも話しました。
あるとき、船がやって来ました。クジラを見に来た人間がいっぱい乗っています。人間たちは興奮して大声をあげていました。ジャンプするクジラ、むなびれを水にうちつけるクジラ、おびれをそらたかくつきだすクジラ。
船が遠ざかり、小さいかげになってからコバンザメが言いました。
「クジラちゃん。みて、みて。ぼく、とぶよ」
「うん、すごいぞ、すごいぞ」