絵本日記「1年365冊」

『ぜつぼうの濁点』 | 言の葉のうつわ

『ぜつぼうの濁点』

2025.09.16

原田宗典 作  柚木沙弥郎 絵  教育画劇 2006年

このタイトルに惹かれて手に取りました。読んでみると、言葉巧みな奥深い世界が。

昔むかし、あるところに言葉の世界があり、その真ん中におだやかなひらがなの国のありました。「あ」から「ん」までの五十音がくっつき合って、意味をなしつつ暮らしているのです。

ある日、「や」行のひなびた町の道ばたに、濁点のみが落ちていたのです。主だったひらがなは「ぜつぼう」。長年仕えましたが、年がら年中もうだめだと嘆く主が不幸なのは自分のせいだと思うようになりました。自分がついていなければ、「せつぼう」という悪くない言葉でいられたのです。自分さえ消えていなくなればと主に頼んで道ばたに捨ててもらったというわけです。

「や」行の住人たちはそんな忌まわしいやつはいらないと言いました。濁点はよるべないわが身をあわれみました。

そこへあらわれたのは「おせわ」。おせわは濁点をかかえて走り、「し」の沼に放りこみました。

濁点は「し」の沼でこれまで主が味わっていた絶望味わいました。このむなしさの中から主を救い出せたのだから自分はそれを喜びとしよう。

そこへ、「きほう」がやって来て、自分くっつけと言うではありませんか。言われるままに濁点が「ほ」にくっつくと、「きぼう」となって、水面に浮かびあがりました。

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