2025.11.05
松谷みよ子 文 司修 絵 偕成社 1976年
昔、からすがたくさんいる村があった。山にも、田んぼにっも、りんご園にも。
ある年、戦争が起こった。戦争は何年も続き、村の男たちは戦いに行った。出て行った男たちは海の向こうで次々と死んだ。
村にはからすが一羽もいなくなった。どこへ、行っちまっただ、からすは・・・。
すると、ひとりのばあさまが言うた。からすは海を越えてお弔いに行ったと。からすはぼうさまになっておらの息子のところへたしかに行った。おまえの亭主のところにも。
息子が死んでも、亭主が死んでも涙も出せないあらたちの代わりにからすは行ってくれただよ。一つひとつのお墓にお経をあげてくれただよ。
その村にまたからすが戻ってきた。りんご園に田んぼに群れている。
戦争が終わったから。
