2025.12.05
ヤーノシュ 作 やがわすみこ 訳 福音館書店 1969年
ワルターはりんごの木を一本もっていました。すくすくじょうぶな木でしたが、リンゴの実が一度もなったことがないのです。よそのリンゴの木は花ざかりでも、ワルターの木には一つも花が咲きません。
一つでいいからと、ワルターは心をこめて祈りました。すると、一つ花が咲き、それが実になりました。とんでもなく大きな実でした。
このような大きなリンゴはだれも買ってくれません。ワルターの心は灰色でした。
さて、このころ、一ぴきのリュウが国を脅かしていました。国中の作物を食い尽くし、田や畑を荒らしまわっているのです。
王様の命令でリュウに贈り物をすることになり、ワルターのリンゴが選ばれました。おばけリンゴはリュウのもとへ運ばれました。おおぐいのリュウはリンゴにかぶりつき、がつがつ食べて食べて食べまくりました。そして、あんまり慌てたものですから、リンゴがのどに引っ掛かり、息が詰まって死んでしまいました。
国中が救われたのです。
ワルターの苦労は報われました。それからは、ワルターは、二つでいいからリンゴがなりますようにお祈りするようになりました。
