2026.01.05
松谷みよ子 作 井上洋介 絵 太平出版社 1999年
朝鮮のお話です。
ある山にとらがいっぱいすんでいた。いろいろなとらがいたが、なかでも変わっているのは、おどりの好きなとらだ。どこかの村から笛や太鼓の音が聞こえてくると、じっとしていられない。あとあしで立ち上がって踊りだす。
たいしょうとらがガオーッと天に向かって吠えた。「おれが すきなのは、人間の 血だ、人間の 肉だ」
そこへ、ひとりのきこりがやって来た。まだ少年である。とらがいることは知らない。
きこりは一本の柳に目をつけ、おので切り始めた。とらたちがたいしょうの命令できこりにかかっていった。少年はどんどん高くのぼっていき、とらたちは木にとびついてはころげおちる。そこでとらばしごを高く組んでいった。
きこりは思った。「おれは ここで、とらに くわれて 死ぬのか」木のてっぺんで笛が吹きたくなり、死んだとうさんに教わったやり方で木の枝から笛をつくった。高くなったとらばしごをたいしょうとらが登り始めた。ところが、笛の音を聞いて、はしごのいちばん下にいたおどりのすきなとらはたまらなくなった。「もうだめだ。おれは おどるぞ」
とらばしごはくずれて、とらたちはころげおちた。おどりのすきなとらはおどりくるった。
その間に、きこりは笛をふきながら、逃げて行った。
